東京地方裁判所 昭和46年(特わ)136号 判決 1971年4月17日
被告人
本籍
東京都板橋区成増二丁目二、一〇二番地
住居
同都同区成増二丁目一五番八号
職業
会社役員
大沢勝治
大正六年一一月一六日生
被告事件
所得税法違反
出席検察官
河内悠紀
主文
1. 被告人を懲役六月および罰金八〇〇万円に処する。
2. 右罰金を完納することができないときは五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
3. この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都板橋区成増二丁目一五番八号(ただし昭和四四年一〇月一日住居表示実施前は同区成増二丁目二、一〇二番地)において、人形の製造販売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようとくわだて、売上の一部を除外して仮名・無記名の預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、
第一、 昭和四二年分の実際課税総所得金額が二一、九九八、〇〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四三年三月一五日、東京都板橋区板橋一丁目四四番六号所在の所轄板橋税務署において、同税務署長に対し課税総所得金額が、三、一七三、〇〇〇円でこれに対する所得税額が八三八、〇〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて、同年分の正規の所得税額一〇、七六七、六〇〇円と右申告税額との差額九、九二九、六〇〇円を免れ、
第二、 昭和四三年分の実際課税総所得金額が二九、九六一、〇〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四四年三月一五日、前記所轄板橋税務署において、同税務署長に対し、課税総所得金額が、五、三〇三、〇〇〇円で、これに対する所得税額が一、七五五、六〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて、同年分の正規の所得税額一五、五四五、九〇〇円と右申告税額との差額一三、七九〇、三〇〇円を免れ、
第三、 昭和四四年分の実際課税総所得金額が、二九、七二四、〇〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四五年三月一六日、前記所轄板橋税務署において、同税務署長に対し課税総所得金額が、五、八三八、〇〇〇円で、これに対する所得税額が一、九一四、四〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて、同年分の正規の所得税額一五、二八六、八〇〇円と右申告税額との差額一三、三七二、四〇〇円を免れ、
たものである。(なお右各所得の内容は、別紙一ないし三の各修正貸借対照表のとおりであり、各税額の計算は別紙四の税額計算書のとおりである。)
(証拠の標目)(かつこ内は立証事項であり、数字は別紙一ないし三の各修正貸借対照表の勘定科目の番号である。)
一、 大蔵事務官作成の次の調査書
1 現金有高調査書(一の1、二の1、三の1)
2 当座預金残高調査書(一の2、二の2、三の2)
3 普通預金残高調査書(一の2、二の3、三の3)
4 定期預金各年末残高調査書(一の4、二の4、三の4)
5 定期積立預金各年末残高調査書(一の5、二の5、三の5)
6 定期積金各年末残高調査書(一の6、三の6)
7 通知預金残高調査書(一の7、二の7、三の7)
8 東京都公債証券調査書(一の10、二の10)
9 有価証券勘定調査書(二の11、三の11)
10 投資信託および出資金調査書(一の13)
11 受取手形および先付小切手の各年末残高調査書(一の15、二の15、三の15)
12 売掛金および前受金残高調査書(一の16 28、二の16 28、三の16 28)
13 たな卸商品在庫高調査書(一の17、二の17、三の17)
14 別口前渡金の残高調査書(一の18、二の18、三の18)
15 未経過保険料調査書(一の19、二の19、三の19)
16 未経過利息調査書(一の19、二の19、三の19)
17 建物減価償却費調査書(一の20 24、二の20 24、三の20 24)
18 什器備品の減価償却費および各年末残高調査書(一の21、二の21、三の21)
19 車輛の減価償却費および各年末残高調査書(一の22、二の22、三の22)
20 支払手形各年末現在高調査書(一の25、二の25、三の25)
21 借入金各年末現在高調査書(一の27、二の27、三の27)
22 未払金残高調査書(二の30、三の30)
23 預り金調査書(一の30、二の31、三の31)
24 店主勘定および非事業用資産勘定の残高調査書(一の31 32、二の32 33、三の32 33 34)
25 預金等の受取利息調査書(一の33、二の34、三の35)
26 配当金についての調査書(一の34、二の35、三の36)
27 譲渡所得計算調査書(各期の譲渡所得金額)
一、 安田信託銀行池袋支店長藪内昭治作成の次の証明書
1 貸付信託残高証明書(一の8、二の8)
2 金銭信託残高証明書(一の9、二の9、三の9)
一、 埼玉銀行成増支店長久保秀夫作成の預金残高および利息証明書(各期の雑所得金額)
一、板橋税務署長野地実作成の証明書(青色申告承認取消)(一の35 36 37、二の36 37 38、三の38 39 40)
一、 次の押収物(昭和四六年押四〇六号)
1 公表帳簿三綴(符号1ないし3)(全般)
2 所得税青色申告決算書綴一綴(同9)(全般)
3 所得税確定申告書等三袋(同10ないし12)(全般)
一、 被告人作成の次の上申書
1 買掛金の残高について(一の26、二の26、三の26)
2 未払費用の各年末残高について(一の29、二の29、三の29)
3 満期保険金の受領明細について(三の34 37)
4 東京都公債証券に対する収益金の受領明細について(二の34、三の35)
5 投資信託の分配金および出資金に対する配当金の受領明細について(一の34、二の35、三の36)
6 不動産所得の収支計算について(各期の不動産所得)
一、 被告人の検察官に対する各供述調書(全般)
一、 被告人の当公判廷における供述(全般)
(法令の適用)
判示各事実につき所得税法二三八条(いずれも懲役刑および罰金刑を併科)。併合罪加重につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役刑につき第二の罪の刑に加重)。労役場留置につき同法一八条。刑の執行猶予につき同法二五条一項。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 松本昭徳)
別紙一 修正貸借対照表
大沢勝治 昭和42年12月31日
<省略>
<省略>
別紙二 修正貸借対照表
大沢勝治 昭和43年12月31日
<省略>
<省略>
別紙三 修正貸借対照表
大沢勝治 昭和44年12月31日
<省略>
<省略>
別紙四 税額計算書
<省略>
注(1) 21.998.000×60%=13.198.800
13.198.800-2.431.200=10.767.600
注(2) 29.961.000×60%=17.976.600
17.976.600-2.430.700=15.545.900
注(3) 29.724.000×60%=17.834.400
17.834.400-2.541.500=15.292.900
注(4) 27.000×75%=2.025